執筆講演

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新しい住まいの提案

2001/11/25
建築コンサルタント・建築家 一級建築士 市村克明  
1.古来の日本家屋の見直しと再生を

自然と敵対し、自然を征服しようとしている欧米型住宅に追従することなく、自然と共生する日本古来の住宅(戦前までつづく)を見直そうではないか。

「家の作りやうは夏をむねとすべし。冬はいかなる所にも住まる。暑き頃わろき住居は、堪え難きこと也。・・・」

日本では、湿気の多い夏を基準とした家づくりがなされてきた。冷房機械のない昔では冬の寒さは暖房で補えるとしても夏の暑さは耐え難いものがあったのであろう。

日本の住まいが解放的で自然に逆らわず、自然と共生するようにつくられてきたのは上記の理由からであろう。

もっとも、西日本には気密性のある民家もあり一概には言えないが、東日本では古来から通気性のある民家が中心とされた。しかし、快適さの追求と文明の利器の発達により、戦後、住まいの造り方は大きく変わってしまった。しかも画一的に。通気の重要性も見直そうではないか。

また日本建築は、深い屋根の軒の出、真白い漆喰の外壁、壁に表れる黒い柱梁のコントラスト、長押の存在による水平線の強調、引き戸で仕切られた開放的空間、建物が庭と一体となって自然に融合する内部・外部空間の相互貫入、統一のあるモデュール尺(現代にあっては3尺を見直し1mモデュールの検討も必要か?)の存在、シンプルデザインの処理等が特徴である。古来の日本家屋の特徴を研究し材料のみならず間取りをも含めた生活スタイルの見直し、再生化が必要ではないか。

2.少子高齢化に対応した住宅は天然素材で

バリアフリーのみならず、核家族化の現代、子供の教育的見地からも老人も含めた大家庭をイメージした住宅の構築が必要ではなかろうか。

住宅は生活の基本の場であるから、子供の成長、教育に重要な役割を果たす。子供は遊びの天才であり全てのものに興味を示し、自由自在にあそびを見つける。特に低年齢児の子供にとっては最も重要な空間である。住宅は子供にとって一番安心できる場所であるから、内部、外部共に、より多くのあそびを見つけだす空間を提供することが必要とされる。しかも子供の目線を意識して。また天然からも学ぶべきものが多い。自然の中からいろいろ見つけだし、創造する無限の能力が子供には潜んでいる。木材などの、感触、香り、暖かさ・ここちよさを感じさせる天然素材を充分に使って、日常生活のなかで自然のすばらしさを発見、体験させることが必要である。

こどもに多いシックハウス症候群、化学物質アレルギーなどにより、特に自然素材、環境にやさしい天然材料などの使用が叫ばれ普及しているが、古来、日本の住宅はそのように造られていた。偽物を排除し本物の素材を使用しようではないか。これは子供に限ったことではなく、現代の日本人には特に重要なことである。

3.自然と調和のある住宅の検討を

高気密高断熱住宅は本当に快適か?どのメーカーも高気密高断熱をうたい文句にして宣伝している。確かに省エネの点からは利点である。マホービン状態にあるようなものだからだ。しかし人工的に快適環境をつくり出すこととなるので、これに必要不可欠なのが機械換気システムである。機械的装置に頼ることによって、体が感じる温度の変化、環境の変化に弱く、暑さ寒さにも弱い体質の人間をつくり出すことにもなりかねない。動物実験などでも自然環境の中で飼育されたマウスのほうが、快適な一定の温度環境で飼育されたマウスより抵抗能力、適応能力などではるかに勝っているとの結果が出ている。気候風土や敷地状況により四季の変化の感じられる環境をつくり出すことの方こそ重要ではないか。

光、風、空気、水、炎、木々などとの関わり方の再考を。

4.提供する住宅のスケールを把握、感動する空間づくりを模索しよう

狭い住宅にはそれにマッチした間取りのつくりかたが必要である。欧米の大邸宅?を模倣すべきではない。欧米追随で、プライバシーに固執し狭い個室をやたらとつくり日本的開放感を捨ててしまった。その結果、空間の連続性と立体的広さを感じさせなくなってしまった。したがって部屋と部屋のかべを取り除き連続的間取りの導入をはかるべきである。

また、床や天井に高低差を付け、あるいは幅の狭い廊下や人間的スケールを使いながらも、予期しないところで予期しない空間が開けたり、庭や池、木々などの周囲の景観をも取り込みながら人の動きと共に調和しながら空間を流動させる方法により感動的な空間を創り出すよう研究が必要a来である。感動的空間は人の動きと共に変化し続ける空間を提供することだ。動線や立体的寸法、光、影などをも含めて総合的有機的空間の提供が必要である。

5.地域に融合した日本的住宅の開発を

風土や気候に合った住まいを忘れ、日本中に画一化された住宅が供給されている昨今、地域社会にあった住まいの提案が望まれる。新しい住まい方、暮らしの在り方とは何か。

そのヒントは天然素材、天然材料を中心に使用する、自然にとけ込む日本伝統の和風空間の良さを見直し、現代社会にマッチした、空間の再生、構築ではなかろうか。
住宅は感性豊かなひとをつくり、環境と共生するひとをつくり育てる。

環境共生住宅が連続して建築され、まち並みが形成されるとき、建築形態としての美しいまちだけではなく、真に美しいコミュニティーをつくり、人間的まち・暮らしやすい潤いのあるまちが出来るのではないだろうか。まさに「住宅はひとをつくる」「ひとはまちをつくる」」である。日本の各地に現存するそれぞれ特徴のある美しいまちなみを見直そうではないか。

関東平野に位置する我々の立地に的確な特徴をもった住宅の供給が待ち望まれる。